いつもありがとうございます。
結(ゆい)の布施でございます。
突然ですが、あなたのパートナー(三味線)は、
前回いつ上場通し(うわばとおし)をされましたか?
つい最近?
1年前?
それとも覚えていないくらい前でしょうか?
今回は、上場通しのことについてお話したいと思います。
かんべり修理のことですね。
かんべりしている棹を直すには、上場通しをするしかありません。
つまり棹の上場をカンナで削って磨くという修理をするので、棹を物理的に削ります。
じゃあなるべく上場通ししない方がいいんじゃないの?
お金もかかるし!
と早速結論づけられそうなトピックですが、しばしお付き合い頂ければ幸いです。
棹の表面が削れていく?
まず、そもそも何で上場通しをする状況になるの?というところからお話してまいります。
弦楽器は弦を押さえて弾くことによって音程を変えていくことができますよね。
ギターなどの楽器の場合はフレットに弦の跡がつき、やがてへこんでいき、
弦を押さえて弾いたときの音のピッチが合わなくなっていきます。
いくら上手に弾くことができても音痴に聞こえてしまうので、
フレットを擦り合わせたりフレットそのものを打ち替えることで修理をします。
(すごい技術だと思います。どなたか見学させてください)
それに対して三味線はフレットがないので、棹に対して直接糸を押さえます。
これによって何が起こるかというと、棹の表面(正確には押さえたツボやその周辺)が
削れてガビガビになっていくんですね。
ガビガビになったところを押さえて弾くとやはり音が悪くなってしまうので修理をします。
どんな修理かというと、削れてガビガビになった箇所がきれいになる手前まで
棹の上場全体を削って磨くというまさかの大技です。
目には目を、削りには削りを!というハンムラビ法典さながらです!
ハンムラビ法典はともかくとして、三味線の棹は削れていくもの=消耗品なんです。
やっぱり、上場通しはなるべくしない方がいい?
決して安くはないお金で三味線を買ったのに、音のためにまたお金をかけて三味線の寿命を縮めるなんて!
そんな理不尽は耐えられない!
上場通しなんてしてやらないんだから!
そう思われる方がいても不思議ではありません。
でも一概にそうとも言い切れないのです。
メンテナンスの上場通しの項目で、上場通しの頻度について
棹材の硬さや普段どのくらい弾いているかでまちまちです。
傾向としては、教室を運営されている先生や、舞台で演奏される機会が多い方は1年に1回程度、
多くの方は2~3年に1回程度という印象です。
このように書きました。
棹材の硬さとは紅木、紫檀、花梨によって違いますし、同じ紅木でも異なります。
上場通しをする目安としては2~3年に1回程度という方が多いですが、
半年に1回程度される方もおられます。
また、前回上場通しされてから3年くらい経っていると、かんべりがかなり酷い状態の棹がほとんどです。
ここで重要なのは、
ガビガビになったツボがきれいになる手前までカンナで削り取るということです。
何をお伝えしたいかというと、
・そもそもそんなに頻繁にするものではない
・かんべりが酷い棹ほど大きく削る
ということです。
三味線がもったいないからなるべく上場通ししないようにしていても、
次に上場通しするときはその分大きく削ることになります。
長くお使いになられるつもりでしたことが逆効果だということも往々にしてあるということですね。
結の職人は大きく削れているところにパテをして磨くので削る量を最小限に抑えることができますが、
それでもやはり限界があります。
まとめ
まとめると、
上場通しは
頻度が少ないに越したことはないが、三味線に長生きしてもらうために定期的にした方がいい
というのが正しい考え方だと思います。
音だけではなく、 三味線を使っている間に消えてしまったツヤも出て見た目も生まれ変わるので、
結果的に三味線を長く楽しむために定期的な上場通しは必須と言えそうです。
きっと、今までよりもっとパートナーを大切にしよう!と思って頂けると思いますよ。
ぜひこの機会にパートナーのかんべりの状態をチェックしてあげてくださいね。
追伸
何をどうチェックしていいのかわからないよー!
上場通しした方がいいのか教えてー!という方は
こちらにメールで三味線の画像を送ってみてください。
ZOOMなどで見させて頂いても大丈夫です。
実物を見ないことには正確にお答えできないこともありますが、
わかる範囲でお答えします。
どうぞよろしくお願い致します。
結