三つ折りの棹と延べ棹はどう違う?

いつもありがとうございます。
結(ゆい)の布施でございます。

先日は私が営業の拠点としている兵庫県神戸市で警報が発令されるほどの大雨が降りました。

それによる被害は自分の周りではなかったのでひと安心しましたが、
これだけ雨が降った次の日にさんさんと晴れたり、湿度が高いとお預りしている三味線の皮が心配だったりします。

もちろん雨の日に三味線を持って外を移動することは極力控えますし、室内は空調で除湿はしてはいますが…。

皆様も身の周りの安全はもちろん、三味線の皮もケアしてあげてくださいね。

さて、今回はタイトルの通り、三つ折りの棹と延べ棹の違いや、メリットとデメリットについてお話していきたいと思います。

三つ折りの棹と延べ棹の違いは?

※前提として、近代の一般的な三つ折り棹についてのお話をします。
二つ折りや六つ折り、中子のところで分解できるかたちの棹については本稿では触れません。

三味線の棹は基本的には三つ折りに分解できるように造られていますが、
継手がない延べ棹と呼ばれる三味線も存在します。

三味線の購入を検討されている方は、

価格の相場として延べ棹の方が安いけど、何が違うんだろう…?

三つ折りは分解できて持ち運びしやすいのは分かるけど、長ケースを車に積んで移動するつもりだし延べ棹の方でもいいような…。

と思われている方も多いようなので、早速比較してまいりましょう。

三つ折りの特徴

・何と言っても持ち運びが便利
・高級な三味線はほぼ間違いなく三つ折り
・延べ棹に比べて棹の反りや曲がりが出にくい

延べ棹の特徴

・何と言っても価格が安い
・三味線を送る場合、送料が高くつく
・三つ折りの棹に比べて棹の反りや曲がりが出やすい

ざっくり分かりやすく言うとこんなところでしょうか。

では、次は少し踏み込んで見てみましょう。

三つ折りにした棹

三つ折りの棹と延べ棹のメリットとデメリット

なぜ延べ棹は三つ折りと比べて安いのか?

三つ折りの棹は、分解して継げるように継手が施されています。
延べ棹は継手を造る必要がないので、コストカットできるというのが最も大きな理由です。
同程度の棹材で比較するとしたら、3~5万円くらいは変わってきます。

三味線ってそもそも送料かかることある?

お近くに信頼できる三味線屋さんがあれば問題ありませんね。

しかし、修理をしたいけどお近くに三味線屋さんがない場合はサングラスをかけてロングドライブするか、出張してもらうか、発送するしかありません。
三味線を長ケースに入れて送る場合は170~180サイズになるので、例えば神戸から関東まで片道で2000円くらいかかります。
三つ折りにできれば100サイズくらいに収まるので、1200円くらいに収まります。

往復送料を考えると、修理内容によっては修理代より送料の方が高くつくこともありますし、
長い目で見ると結局三つ折りの方が安く済んだ、ということもあるかも知れませんね。

なぜ高級な三味線は三つ折りなのか?

前述した通り、三味線には継手が施されていて分解できるようになっています。

これは持ち運びしやすいというメリットもありますが、一本の棹を三つに分けることによって反りや曲がりが出にくくなるというメリットもあります。

厳密に言うと、三味線は木材なのでいつかは必ず狂い、修理が必要になってきます。
反り・曲がり直しはそれなりに費用がかかりますし、できる限り修理しない状態で長く使いたいですよね。

それから、不慮の事故で三味線を倒してしまったということがあると大体ホゾや継手から壊れます。
精密で繊細なところなのでそれは容易にイメージして頂けると思います。

それはつまり、熟練した職人なら修理できるパターンが大体分かっているということです。

しかし延べ棹で、嫌な箇所で酷い壊れ方をしてしまうと修理できないとなる可能性も十分あります。
そうなると新しい三味線を購入するか、心まで折れて三味線ごとやめてしまうケースもあるでしょう。

そんなの…寂しすぎる…。

高級な三味線は三つ折り、という考え方よりも
三味線は高級だから長く使えるような細工が施されている、という考え方の方がしっくり来るかも知れませんね。

継手にホゾ金が仕込まれたいわゆる金細の三味線

まとめ

三つ折りの棹と延べ棹の違い、メリットとデメリットをまとめると、

長く使う予定なら三つ折りの棹、
お試しで買うなら比較的安価な延べ棹もアリ

でした。

ひとつでも参考にして頂けるものがあれば幸いです。

余談ですが、
継手は指物(さしもの)と呼ばれる技法で、釘を使わずにホゾなどで木材を組んで外からはその組み手を見せないようにするという日本の伝統工芸品や家具(和箪笥など)に用いられてきた技術なんですよ。

その技法がしっかり三味線にも組み込まれているんです。

そんな先人の研鑽に想いを馳せながら三味線を楽しむのも粋ですよね!

最後までお付き合い頂きありがとうございました。