三味線の皮を長持ちさせるには?

いつもありがとうございます。
結(ゆい)の布施でございます。

5月下旬に差し掛かり、私が拠点としている兵庫県神戸市では気持ちのよい気候の日が多く、日中は暑いな~と感じる日も増えてきました。

夜はまだ肌寒く感じることが多いので、皆様も体調にはより一層ご留意くださいね。

さて、気持ちのよい日が多くなってきたとはいえ、三味線を弾いている方にとっては少しソワソワしてくる時季でもないでしょうか?

そう、梅雨がもうすぐやってきますね。

三味線の皮は湿気や熱に弱いので、梅雨時季から夏にかけて皮が破れやすくなります。
破れなくても皮がずれてしまうことも多くなります。

三味線の皮はいつか破れるものとは分かっていても、できることなら少しでも長持ちして欲しい、せめて夏は越えて欲しい、そう思われている方も多いのではないでしょうか。

(張り音があんまり落ちていたら張り替えを検討されてもよいと思いますが)

そこで今回は、少しでも皮が破れにくくすると考えられる方法をお伝えしたいと思います。

三味線の皮を破れなくする方法はない

結論から申し上げると、三味線の皮を破れなくする方法はありません。

きちんと張ってあって良い音が鳴っていればいつか必ず破れてしまうので、皮が嫌がる湿気と熱を避けるという考え方で、あくまで人為的に皮を破れにくくするということが前提になります。

さて、その方法ですが…。

①湿度調整板や桐の胴板を皮に当てて保管する
②きちんと和紙袋に入れて保管する
③毎日三味線を弾く
④番外編

というものです!

どれも聞いたことあるよ!やってらんないよ!

という方も少しお付き合い頂ければ幸いです。

桐の胴板を装備したところ。

三味線の皮を長持ちさせる方法

① 湿度調整板や桐の胴板を皮に当てて保管する

これは基本ですね。

湿度調整板は、乾燥剤と活性炭を不織布に固定化した板状乾燥剤で、
その名前の通り皮の湿度を適正に保ってくれるので皮の保管には最適です。
取り替えの目安は半年程度です。

桐の胴板に関しては、今さら説明する必要がないくらいですね。
桐材は柔らかく、防湿、防虫、防カビに優れているということでタンスやベッドのすのこにも用いられています。
湿度調整板と同じように、三味線をケースにしまうときに皮と糸の間に挟んで使います。

イメージとしては桐の胴板の方が良さそうな感じがしますが、湿度調整板と比べて厚みがあるので、定位置にセットするときに音緒側の糸に板が干渉します。
(糸切れない?大丈夫?という感じです。)

また、長年使っていると板が反ってきます。

湿度調整板か桐の胴板のどちらを使われるかはお好みでよいと思います。

②きちんと和紙袋に入れて保管する

これも基本ですね。

和紙には通気性と吸湿性に優れているという特徴があります。
ただ胴を保護するだけのものではなく、なぜ和紙袋に入れて保管するのかという理由があるんですね!

上記の理由があるため、皮張りを納品するときは和紙袋とナイロンの袋の二重がけではなく和紙袋のみでお渡ししています。
(ナイロンの袋がご入り用という方にはもちろんお渡しします)

たとえば破れた和紙袋を使い続けるのではなく、様子を見て取り替えてあげましょう。

余談ですが、障子は高い通気性と吸湿性を持ち湿度の高い日本において最適な建具といわれています。
寒い冬や暑い夏をどうやって快適に過ごすか?という先人の知恵が盛り込まれているのですね。

私たちが過ごしやすい環境は、三味線にとっても過ごしやすい環境だと言えると思います。

③毎日三味線を弾く

想像してみてください。

薄暗く閉塞感のある狭い空間にずっといる子どもと、開放感のある場所で遊び回る子どもとどちらが健やかに過ごせそうでしょうか?

答えは明白ですね。

三味線を久しぶりに弾こうと思ってケースを開けてみたら皮が破れていた、なんてお話もよく聞きます。
毎日弾くのは難しいかも知れませんが、定期的に三味線をケースから出し新鮮な空気を吸わせてあげて、三味線を弾いて皮を振動させてあげましょう。

やっぱり、私たちが快適だと思える環境は三味線にとっても同じと考えるとイメージしやすいと思います。

④番外編

ここは結構重要だと思います。

ズバリ、三味線屋や職人に希望や結果をはっきり伝えることです。

あんまり張れていなかったのに3ヶ月くらいで破れたとか、
1ヶ月くらいで破れて、何の保証もなくまた満額請求されて嫌な気持ちになったというお話もしばしば聞きます。

どんな環境にあっても破れるときは破れてしまうのでその原因や期間について責任の所在を確かめるのは正直無理なのですが、
だからこそその責任の全てを三味線を弾いている人に押し付けることは間違いだと考えています。

胴ごしらえは適正だったか、皮に対して木栓のかませ方は適正だったか、糊の粘度や塗り方は適正だったか、皮を引くバランスは適正だったかなど、皮の張りの強さの他に重要なポイントはいくつもあります。

三味線は定期的なメンテナンスが欠かせず、必然的に三味線屋とお付き合いされることが多くなると思います。

良好な関係を築くためにも思っていることははっきり伝える方がよいでしょう。

皮に木栓をかませているところ。
皮を引く方向のバランスにも影響します。

まとめ

三味線の皮を長持ちさせる方法をまとめると、

①湿度調整板や桐の胴板を皮に当てて保管する
②きちんと和紙袋に入れて保管する
③毎日三味線を弾く
④職人に要望をはっきり伝える

でした。

これから三味線にとって嫌な時季になりますが、
どれかひとつでも参考にして頂いて少しでも快適に過ごして頂ければ幸いです。

また、最も重要なこととして、皮も大切な命なので大切に扱って欲しいと願っています。

他、ご相談などありましたらご遠慮なく仰ってくださいね。

よろしくお願い致します。